「白蛇の道」4まだ白蛇がうちに居座っている。 えさも与えてないのに、どうやって生きてるのだろう。 彼にも見えたのだから、生き霊というわけでもなさそうだ。 彼には白蛇が戻ってきたことは言わないでいる。 心配させてたくないし、これ以上関わりあいになりたくないだろうから。 私自身だって、関わりたくないけどね。 一人暮らしだったのに、帰って迎えてくれるものが居るというのも、 不思議な感じだ。 まるで自分のうちのように、「お帰り」という白蛇。 私もなぜか段々慣れてきてしまった。 思わず、「ただいま」と言ってしまう。 ペットだと思えばいいのか。 とても可愛いとは思えないけど・・・。 この頃、彼からの電話が少ない。 以前は帰ったらすぐに電話をくれたのに。 今は、仕事が忙しいとのことだけど、 白蛇のこともあって、避けられてるのかしら。 それだけではないかもしれない。 不安に感じて、こちらから電話しようにも、 彼の仕事用の携帯に電話する訳にはいかないし、 私用の携帯は持ってないのだ。 帰りは残業で遅いらしい。 今まではこんなことなかったのに。 もしかしたら、他に好きな人ができたのだろうか。 疑心暗鬼になってしまうのだ。 「男のことを考えているんだろ。」 見透かしたように、白蛇が突然に話し出す。 「彼のことを考えて何が悪いの。」 開き直ってみるが、弱気になってしまう。 「考えるだけ無駄なんだ。 信じられないなら、別れればいい。」 「そんなに簡単に割り切れないわよ。」 白蛇と話すほうが無駄だよね。 そう思いながらも、心に秘めておくと、 ますます想いが空回りするのだ。 「自分でもどうしていいかわからないのよ。」 つい弱音を吐いてしまう。 「だから余計なことは考えないようにすることだ。」 白蛇に慰められてどうする。 「あなたのせいかもしれないでしょ。」 つい、白蛇を責めてしまった。 自分のせいかもしれないけど、 そう思いたくないのだ。 「蛇がそばに居るだけで離れていくようなら、 それだけの男なのだ。」 なんか、納得してしまう。 彼からの電話を待ってるだけなんて、 哀しすぎるよね。 白蛇もまともなこと言うじゃない。 それにしても、私はなんでこう受身なのだろう。 もっと積極的にならないと、とも思うのだけど、 嫌われるのが怖くて、人の顔色を伺ってしまう。 すぐに「ごめんなさい」と言ってしまうのは、 私の悪い癖だ。 自分でも嫌になるけど、仕方ない。 意地張って謝れない人よりましか、とも思うけど。 「ごめんなさい」より、「ありがとう」と言いたい。 突然、電話のベルが鳴った。 彼かと思って、急いで受話器を取る。 「もしもし」 「・・・・・」 何も聞こえない。 でも、息遣いだけは聞こえるような・・・。 無言電話? 彼かと期待しただけに、失望も大きい。 ガチャンと思わず電話を切ってしまった。 白蛇といい、無言電話といい、 嫌なことばかり続くなあ。 肝心の彼からの電話はかかってこないし、 もう今日は待つのをやめて寝ようかしら。 睡眠不足だと、仕事中眠いんだよね。 あくびをかみ殺してると、人と目が合ったりして。 白蛇も寝たのか何も言わない。 でも、蛇は夜行性かな? 私が寝てる間に這い回られても薄気味悪い。 かといって、一緒に寝られても困るな。 下の「続き」をクリックすると、続きが読めます。 続き |